コラム

2023.03.07AI-OCR

インボイス制度で利用できる補助金の申請方法と種類、受給条件

インボイス制度に対応するには、新しい様式に対応した会計ソフトウェアやレジ、システムの導入など何かとコストがかかります。そこで本記事では、インボイス制度で利用できる補助金制度を紹介します。補助金の利用でインボイスの対応に必要なコストを軽減したい方はぜひ参考にしてください。
 
 

 

 

 

インボイス制度のメリットデメリットを図解で解説

 

 

インボイス制度とは

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、2023年10月からスタートする制度です。制度の導入により、正確な適用税率・消費税額の把握に繋げ、課税事業者と免税事業者の納税を公平にすることを目的にしています。

 

制度の開始後に仕入税額控除を適用するには、インボイス発行事業者の適格請求書が必要です。適格請求書とは、現行の区分記載請求書に新しい記載事項を加えた様式のことです。免税事業者は適格請求書を発行できないため、取引先の仕入税額控除ができないなどの問題点も指摘されています。

 

 

 

インボイス制度に関わる補助金設置の背景と目的

制度の導入によって企業は大きな影響を受ける可能性があります。補助金制度が設置されたのは、制度によって生じる影響を緩和し、支援する目的もあるからです。考えられる影響や背景については以下で紹介します。

 

 

経理の負担が増える

これまで使っていた区分記載請求書は無効となり、インボイス制度で新たに使われる適格請求書の様式に変更する必要があります。以前の様式よりも記載項目が増えるため、対応する経理の負担も増加します。

 

仕入税額控除の計算をするために、適格請求書とそれ以外の請求書を振り分ける手間が発生します。仕入税額控除を適用できるのは、課税事業者が発行した適格請求書のみです。インボイス発行事業者以外に支払う消費税が控除の中に混ざってもいけないため、その管理も求められます。

 

項目が適切に記載されているかの確認も必要です。税額の計算も免税事業者と課税事業者で異なるため、以前よりも計算が複雑になります。

 

そのほかには、適格請求書の発行を要求されれば、交付に応じなければなりません。交付した請求書の写しの保存も義務です。交付の手続きや書類の保存・管理も新しい経理業務として加わります。
 

 

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消費税控除が減るおそれがある

制度が始まると、自分が課税事業者で、仕入れ先が免税事業者(消費税納税義務のない事業者)の場合、仕入税額控除を受けられなくなります。適格請求書の発行ができない免税事業者と取引すると、消費税は控除できなくなり、そのまま納付するしかなくなります。

 

経過措置として、制度開始後の6年間は、免税事業者との取引のうち一定割合を仕入れ税額控除できます。開始から前半の3年間(2026年9月30日まで)は取引の80%、後半の3年(2029年9月30日まで)は50%の控除が可能です。ただし、簡易課税制度を選んだ課税事業者は除きます。

 

 

免税事業者は取引先や売上が減るリスクがある

以前と違い、制度導入後は、免税事業者との取引で発生する消費税は仕入税額控除ができなくなります。控除できない分、課税事業者の税負担が増えるのがデメリットです。そのため、免税事業者と取引を控える課税事業者が発生するおそれも出てきます。

 

免税事業者が課税事業者になれば話が解決しますが、そう簡単にはいきません。課税事業者になると消費税を負担する必要があるため、基本的に売上規模が小さい免税事業者が負担するのはなかなか難しいからです。

 

このことから、免税事業者の個人事業主や中小規模の企業は、インボイス制度の影響を受けて取引や売上が大幅に減少するおそれが指摘されており、制度にある問題点として挙げられています。

 

 

システム導入などでコストがかかる

インボイス制度に対応するにあたり、会計で発行するレシートや領収書も適格請求書の記載要件を満たす必要があります。これは特に小売業、飲食業に及ぶ影響が大きくなります。

 

制度上では、レシートは適格簡易請求書として扱います。従来のレシート様式は区分記載請求等保存方式に対応したものです。インボイス制度で使用できるものではないため、新しい様式に対応したレジの導入が求められます。

 

既存のシステムにも大きな影響があります。例えば、請求書発行システムを利用しているなら、記載要件を満たす新しい様式に対応できるシステムに変えなくてはなりません。会計システムでは免税事業者と課税事業者で請求書を区分して管理できる必要があります。

 

特に自社でシステムを開発している場合は改修期間が必要になるため、早めに対応する必要があります。

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インボイス制度で利用できる補助金の種類

 

インボイス制度で利用できる補助金の申請方法と種類、受給条件

 

インボイス制度関連で利用できる補助金は主に3種類あります。

 

1つ目は、「小規模事業者持続化補助金」です。免税事業者がインボイス発行事業者に登録する場合に、補助上限が一律50万円上乗せされます。

 

2つ目は「IT導入補助金」です。インボイス制度に対応する会計ソフトや機器を導入する場合に補助金が出ます。

 

3つ目は「ものづくり補助金」です。インボイス制度への対応に必要な設備投資に対して受けられる補助金です。

 

これらの補助金は、中小企業・小規模事業者を対象に生産性向上や販路開拓、成長投資などを支援する目的で推進されているもので、2022年度に補正予算が組まれました。それぞれの補助金制度の詳細や目的、受給条件、申請方法については後述します。

 

 

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インボイス制度の補助金1 : 小規模事業者持続化補助金

小規模の法人・個人事業を対象にした持続化補助金制度です。一定の要件を満たし、審査に通過することで、制度で設定された枠内の補助金を受け取れます。

 

小規模事業者持続化補助金の目的・概要

小規模事業者向けの支援制度で、インボイスを含む各制度変更への対応と生産性向上や販路開拓の取り組みを支援する目的で設けられています。

 

補助金には通常枠・特別枠という類型があります。特別枠はさらに細分化されており、賃金引き上げ枠、創業枠など、取り組みごとの枠が用意されています。各枠の補助率は基本、一律で2/3です。

 

2023年2月27日時点で受付が予定されている第12回公募からは、インボイス枠が廃止されます。その代わりに、2022年度第2次補正予算で設けられたインボイス特例が利用可能です。

 

免税事業者からインボイス発行事業者へ転換する場合に限り、全枠で補助上限が50万円分一律上乗せされます。インボイス特例利用時の上限は通常枠が100万円、特別枠が250万円です。

 

 

小規模事業者持続化補助金の受給条件

常時使用の従業員が20人以下の宿泊業、娯楽業、製造業その他、あるいは従業員5人以下の商業・サービス業に該当する法人・個人事業などが対象です。

 

要件として、直接的、間接的問わず、資本金・出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと、直近過去3年分の各年において、課税所得の年平均額が15億円以下であること、受付締切日の前10ヶ月以内に持続化補助金(一般型・低感染リスク型ビジネス枠)で採択されていないことが求められます。

 

商工会議所・商工会が支援する補助金制度ですが、会員・非会員問わず利用できます。商工会地域と商工会議所地域では、窓口が異なるため気をつけてください。

 

 

小規模事業者持続化補助金の申請方法

郵送かWEB申込みでの申請が可能です。

 

郵送での申請方法を例にするとして、初めにすることは経営計画書と補助事業計画書の作成です。計画書の作成のほか、「応募時提出資料・様式集」を参考に必要書類を用意します。管轄の商工会議所の窓口で書類を提出し、「事業支援計画書」の交付を受けてください。事業支援計画書の受付締切は公募締め切りの一週間前までです。

 

申請書類をそろえたら、地域指定の事務局へ申請書類一式を郵送します。郵送後は申請内容をもとに審査が行われます。二ヶ月ほどの審査期間を経て採択されれば補助金の交付決定です。

 

審査時は書類に不備があると不採択になるため気をつけてください。交付決定後は補助事業の実施や実績報告書の提出などを行うことで、補助金が受け取れます。

 

 

 

 

インボイス制度の補助金2 : IT導入補助金

インボイス制度の対応で新しいITツールを導入したい場合やレジ、PCなどのハードウェアの購入が必要な場合に利用できる補助金です。

 

 

IT導入補助金の目的・概要

ITツールの導入の際に利用できる補助金です。課題やニーズに応じたITツールの導入を支援し、業務効率化・売上アップに繋げる目的があります。インボイスへの対応にも活用可能です。

 

インボイス対応に利用できるものとして通常枠、デジタル化基盤導入型、複数社連携IT導入類型があります。補助額は最大450万円、補助率は1/2~3/4です。2022年度第2次補正予算からは、安価なITソフトウェアにも対応できるように補助の下限の引き下げや撤廃が行われます。

 

 

IT導入補助金の受給条件

中小企業・小規模事業者の方が対象です。厳密には業種・組織形態によって異なります。例えば、小売業なら資本金が5,000万円以下、従業員数が50人以下までが対象です。製造業になると、資本金3億円以下、従業員数は300人以下までになります。

 

補助制度の各枠と類型ごとに要件や業務プロセスの指定があり、その条件を満たす必要があります。

 

補助対象になるものは、労働生産性を向上させるITソフトウェアやクラウド、会計・受発注・決済・ECソフト、PC・タブレット・レジ・スキャナー・プリンターなどのハードウェアや複合機、その他導入関連費などです(類型ごとに補助対象が異なります)。

 

デジタル化基盤導入類型や複数社連携IT導入類型では、機能要件として会計・受発注・決済・ECのうち1~2機能以上の指定があります。通常枠との違いは補助対象になるものが限られる点です。レジなどのハードウェアの導入にはデジタル化基盤導入類型が適しています。

 

 

IT導入補助金の申請方法

公募要領を読んだ上で補助事業についてよく理解し、準備をします。申請時はGビズIDプライムアカウントが必要になるため、取得しておきましょう。ID発行まで二週間ほどかかります。

 

申請前に自社の業種・事業規模、課題に応じたITツールの選定とIT導入支援事業者との商談などを進めてください。支援事業者と事業計画を作成したら、申請マイページの招待を受けて申請に必要な情報入力を行います。

 

必要書類などもそろえたら、交付申請をしてください。審査後に採択されたら、ITツールの契約・納品・支払いを行い、補助事業を実施しましょう。そのあとは実績報告書の提出などの手続きを踏むことで補助金が交付されます。

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インボイス制度の補助金3 : ものづくり補助金

商品・サービス開発や生産プロセスの改善、経営革新に関する設備投資などに利用できる補助金です。DXに資する設備・システム開発の支援を目的とした枠の利用で、インボイスに関する補助金を得られます。

 

 

ものづくり補助金の目的・概要

サービス開発、試作品開発、生産プロセス改善を目的とした設備投資支援を行う補助金制度です。通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠、グローバル市場開拓枠のうち、デジタル枠がインボイス対応で利用できます。

 

デジタル枠はDXに関連する製品やサービスの開発や生産プロセスの改善、生産性向上に必要な設備投資の支援をするためのものです。

 

補助率は1/2または2/3、補助金額は最低100万円以上で、金額上限は従業員数によって変わります。5人以下の場合は750万円、6~20人の場合は1,000万円、21人以上の場合は1,250万円までです。

 

インボイス関連で補助対象となる経費は、機械装置・システム構築費、専門家経費、クラウドサービス利用費があります。

 

 

ものづくり補助金の受給条件

主に中小企業、個人事業が対象です。業種や組織形態によって細かい条件が異なります。例を出すと、サービス業の場合は資本金5,000万円以下、従業員数100人以下が対象です。特定事業者の一部に該当する場合は、サービス業で従業員数300人以下でも対象になります。

 

審査に関わる基本要件として、以下の要件を満たす3~5年の事業計画が求められます。

 

1.事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

2.給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

3.事業場内最低賃金を地域別最低賃金に+30円以上の水準にする

 

上記の要件に加えて、デジタル枠固有の要件も満たす必要があります。要件とは、経済産業省のDX推進指標を活用してIPAに自己診断結果を提出することと、IPAの「SECURITYACTION」のひとつ星または二つ星の宣言をすること、設備投資の単価が税抜き50万円以上であることです。

 

そしてさらに、次のいずれかを満たす必要があります。ひとつはDXに資する革新的な製品・サービス開発をすること、もうひとつは、デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供の改善をすることです。

 

ほかには、審査で取り組み内容の革新性なども問われます。多くの審査項目があるため、公募要領によく目を通しましょう。

 

 

ものづくり補助金の申請方法

電子申請のみの受付のため、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。すぐに発行されないので早めに取得することをおすすめします。

 

取得後は電子申請システムにログインをして、申請に必要な企業情報や経営状況などの情報を入力します。書類添付として賃金引き上げ計画の表明書や事業計画書、決算書などが必要です。情報入力と書類添付が済んだら申請内容を送信します。

 

申請受付後は審査が行われ、採択されれば交付決定です。計画した補助事業の実施後に具体的な交付額が確定します。請求を行うことで補助金が支払われます。
 

 

インボイス制度のメリットデメリットを図解で解説

 

 

インボイス制度に関する補助金の注意点

インボイス制度関連の補助金を利用する場合に気をつけたい点を紹介します。主に支出に関する注意点です。

 

 

補助金は課税対象になる

補助金は収入とみなされるため、課税の対象です。法人なら法人税、個人事業主なら所得税や所得に応じて増減する住民税などに影響します。

 

補助金を受け取った年度は、何もしなければ課税所得が増えて負担が苦しくなります。そのため、補助金で発生する税負担を先延ばしにする圧縮記帳が認められています。圧縮記帳とは、補助金額で固定資産の取得額を減額し、圧縮損として計上することで、益金と相殺する方法です。

 

圧縮記帳で繰り延べすることで単年の税負担が軽くなり、補助金の効果を上げることが可能です。この場合、分割納付となるだけで免除されるわけではない点には注意しましょう。

 

 

交付決定日以前の取引は対象外になる

補助金の交付決定以前に購入したものは補助の対象外となるため注意しましょう。補助事業の取り組みは、交付決定を受けたあとに行うものだからです。そのため、補助の対象になるものを購入したい場合は、交付が決まってから購入・発注・契約などを行ってください。

 

支払いをする際は、補助金制度ごとに経費支出のルールがあるためよく確認しましょう。

 

基本は銀行振り込みがおすすめです。利用する制度にもよりますが、手形や小切手、商品券、電子マネーなどの決済は補助の対象外になることが多いです。1取引で10万円を超える場合の現金払いも避けた方がよいです。

 

支払いは補助対象期間内に終える必要があるため、クレジットカードで支払いをすると引き落とし期間が間に合わず、補助対象期間を過ぎる恐れがあります。

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補助金以外のインボイス負担軽減措置

補助金の利用以外で、インボイス制度で発生する負担を軽減する方法を紹介します。令和5年度の税制改正大網によると、支援措置の決定や制度の見直しが予定されています。

 

 

納税額が売上税額の2割に軽減

インボイス制度の見直しにより、2割特例という激変緩和措置ができました。2割特例により、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の税負担は「売上税額×20%」になります。

 

2割特例は、免税事業者が課税事業者となったときの税金・事務負担を軽減するために作られました。本来なら請求書の仕分けが必要ですが、特例の適用でインボイスの管理が不要になります。消費税の計算も、売上税額の把握だけで可能です。

 

対象期間は2023年10月1日~2026年9月30日の3年間です。特例を適用するのに必要な事前届出はありません。適用する際は、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を書くだけです。

 

 

少額な返還インボイスは免除

税込み1万円未満の返品・値引き、割戻しなどの売上に関わる対価の返還で、返還インボイスを交付する必要がなくなります。対象はすべての人で、期間の定めがない恒久的なものです。以前から振込手数料の扱いなどの事務負担が懸念されていましたが、免除措置によって手間が軽減されました。

 

 

少額取引はインボイス不要

少額特例により、1万円未満の取引の場合は、インボイス保存が不要になります。帳簿記載をすれば、帳簿のみの保存による仕入税額控除が可能です。請求書を仕分けする手間が不要になるメリットがあります。

 

少額特例での1万円未満とは、国税庁の回答によると1回の取引で動いた税込み価格で考えます。

 

2023年10月1日~2029年9月30日までの措置で、対象者は基準期間において課税売上高が1億円以下か、特定機関の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。


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まとめ

インボイス制度対応のために利用できる補助金制度は3種類あります。給付金とは異なるため、利用する場合は事業計画の提出などの準備が必要です。

 

補助金以外では特例措置の適用もできます。インボイス発行事業者への転換を検討している方は、2割特例などの適用で税金や事務負担の軽減が可能です。

 

 


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