コラム

2023.02.20AI-OCR

インボイス制度の激変緩和措置とは? 経過措置の内容も解説

令和5年(2023年)10月1日からインボイス制度が開始されます。これまで免税事業者であった個人事業主やフリーランス、または免税事業者と事業を行っている企業は、この制度へ対応するために適切な準備を完了させておかなくてはなりません。

 

しかし、インボイス制度についてまだ理解しきれていない事業者の方も少なくないかもしれません。そこで本記事ではインボイス制度の概要から、「どう消費税に対応したら良いか」「税金控除制度がどのように変わるのか」などまで、詳しく解説していきます。
 

“わかりやすい!インボイス制度eBook”

 

 

 


AI入力ソリューション無料パンフレット

 

 

インボイス制度とは

インボイス(適格請求書)という言葉は、消費税額控除を計算した請求書・納品書などを指しています。

 

令和5年10月から実施されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、「仕入税額控除を利用する企業」と「その企業に商品を販売する事業者」には、このインボイスを発行・保存する義務が生じます。

 

これまで仕入税額控除制度を利用する際は、その控除を受ける企業が帳簿に記載するのみで済むケースが大半でした。つまりそれら企業に商品を販売していた事業者(フリーランス・個人事業主含)では、対応の必要はありませんでした。しかしインボイス制度により、そうした売手事業者の側にもインボイスの発行・保存が求められます。

 

さらに課税事業者でないとインボイスは発行できません。つまり今まで消費税を徴収されていなかった事業者も、課税事業者になっておかなければインボイス制度へは対応できません。

 

こうしたインボイス制度について学び、対応を進めるためには、まず仕入税額控除について知る必要があります。

 

商品を売買する事業者では、商品仕入れ時に仕入れ先へ消費税を支払い、その商品販売時には販売先から消費税を受け取ります。しかし販売先から受け取った消費税額をすべて国へ納める必要はありません。

 

事業者は「販売時に受け取った消費税額」から「仕入れ時に支払った消費税額」を差し引いた金額を、売上の消費税として納められます。この仕組みが「仕入税額控除」です。

 

インボイス制度では、企業がこの仕入税額控除を利用する条件として、「仕入れ先からインボイスを発行してもらうこと」が追加されます。言い換えれば、インボイスを発行できない事業者から仕入れを行えば、この控除が適用されなくなります。

 

したがって企業は今後、インボイス制度に対応していない事業者との取引を躊躇しやすくなると予想されています。こうした背景で、これまで消費税を支払っていなかった多くの免税事業者も、課税事業者となりつつインボイスへの対応準備を進めています。

 
 
 
 

インボイス制度対応ガイド

 
 

 

インボイス制度の激変緩和措置とは

これまでは課税事業者でも、年間に1,000万円を超える課税売上がある場合に限り、消費税が課されました。しかしインボイスを発行する課税事業者には、売上額に関係なく消費税が課されます。

 

そこで問題となるのがフリーランスや小規模事業者です。消費税支払いにより財政負担が増大したり、事務作業が増加したりすることで、事業継続が困難になる事業者が生じると予測されています。このような問題を解決するため、いくつかの負担軽減措置が用意されました。

 

これら措置は基本的に、中小企業や小規模事業者を対象にしていますが、すべての事業者を対象とするものもあります。「課税事業者になることで自社の負担が増す」と認識している事業者は、ぜひこれらを活用すべきでしょう。

 

ただし、あくまでも一時的な軽減措置である点も理解しておかなければいけません。

 

参照元:インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/qa_futankeigen.pdf
 

 

 


AI入力ソリューション無料パンフレット

 

小規模事業者向けのインボイス制度緩和措置

小規模事業者はインボイス制度の負担軽減のため、2つの措置を利用可能です。それぞれの措置について解説します。

 

 

納税額が2割になる

「小規模事業者の消費税額控除に関する経過措置」または「2割特例」と呼ばれる制度です。免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった場合、売上にかかる消費税額が通常の2割にまで軽減されます。この措置を受けるための条件は以下です。

 

・前々年、または前々事業年度の課税売上が1,000万円以下

・資本金1,000万以上の新設法人ではない

・仕入税額控除に際して調整対象固定資産や高額特定資産を取得していない

・課税期間を1ヶ月、または3ヶ月に短縮する特例の適用を受けていない

 

前々年の課税売上が1,000万円を超えた場合は、基本的に課税事業者となります。課税事業者では、この措置は受けられません。

 

さらに前々年に事業を開始していない場合は新設法人と見なされます。この場合は資本金が1,000万円を超えていると、軽減措置の対象とはならないので注意しましょう。

 

なお課税事業者になった際には、調整対象固定資産や高額特定資産の取得による特例や、課税期間を短くする特例が受けられます。これら特例を受けてしまっていると、2割特例は受けられなくなります。

 

上記の条件を満たす免税事業者が、インボイス制度を契機として課税事業者になった場合、2割特例が受けられます。この特例適用下での消費税額を計算してみましょう。例えば、課税売上が500万円の場合、その10%である50万円が消費税額です。

 

しかし特例により、この50万円の2割、つまり10万円が実際の納税額となります。したがって40万円もの節税が実現します。

 

この軽減措置を受ける場合は、事前に申告する必要はありません。特例対象者なら、消費税の確定申告書に特例を受ける旨を記載するだけで済みます。ただし、この特例は「令和5年10月1日〜令和8年9月30日」の売上についてのみ適用されます。永続的な制度ではないことを忘れないでください。

 

 

持続化補助金が50万円上乗せされる

小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)を利用する際も、インボイス対応を行う小規模事業者なら、補助上限額が一律で50万円加算されます。具体的には、当該上限額50万円〜200万円が、100万円~250万円にアップします。

 

なおこの補助金の対象は、「広報費」「店舗改装」「展示会出店費」「税理士相談費」「委託費」「開発費」などです。

 

小規模事業者とは、常時使用する従業員数が以下の人数に収まる事業者のことです。

・製造業、建設業、運輸業など:20人以下

・卸売業:5人以下

・サービス業(宿泊業・娯楽業以外):5人以下

・宿泊業・娯楽業:20人以下

・小売業:5人以下

 

この条件を満たしている免税事業者が、インボイス対応のために課税事業者となった場合、上述の上限金アップなどの措置を受けられます。
 

 
 
 
 

インボイス制度対応ガイド

 
 

 

中小事業者向けのインボイス制度緩和措置

インボイス実施にあたり、中小事業者に向けても2つの緩和措置が用意されました。インボイス不要になる特例もあるため、積極的に活用しましょう。

 

 

ITツール導入補助金の下限が撤廃される

すでに課税事業者である中小企業については、IT導入補助金の「デジタル化基盤導入類型」について、下限額5万円を撤廃することが決定しました。したがって安価なソフトウェアでも導入補助金の対象になり得ます。

 

IT導入補助金は、企業が「業務効率化や収益の向上」「セキュリティ強化」「デジタル化基盤導入」を目的としてITツールやハードウェアを導入する際、それを金銭面で補助する制度です。これら目的別に補助枠が設置されています。

 

インボイス制度に関連して補助金・補助率が引き上げられるのは、「デジタル化基盤導入類型」という補助枠です。この類型での補助対象は、「会計・受発注・決済・ECに関連したソフトウェア、クラウド費用(最大2年分)、導入費」などです。

 

加えて「PC・タブレット・スキャナー」「レジ・券売機」などのハードウェア購入には、専用の補助枠が設けられます。

 

加えて補助率も従来1/2以内でしたが、今日では条件次第で3/4以内・2/3以内に引き上げられています。インボイス制度実施後も、この補助率が維持されます。

 

なお、その他の補助枠とその対象例は以下ですが、これらについてはインボイス制度に際しての変更はありません。

・通常枠:ソフトウェア類、クラウド費用(1年分)、導入費

・セキュリティ強化推進:セキュリティサービス利用料(2年分)

・複数社連携IT導入類型:会計・受発注・決済・ECに関連したソフトウェア、消費動向分析経費、補助事業者が参画事業者をまとめる事務費、外部専門家謝金・旅費

 

 

1万円未満の取引はインボイスが不要になる

以下の条件を満たす中小事業者は、1万円未満の課税仕入れではインボイスの保存が不要です。

・2年前の課税売上が1億円以下

・1年前の上半期の課税売上が5,000万円以下

 

上記対象事業者はこれまで通り帳簿への記載のみで良く、インボイスを用意する必要はありません。同様に売り手側の事業者も、1万円未満の商品を販売する場合はインボイスを発行しなくて済みます。

 

したがってこのケースに該当するなら、免税事業者のままでも問題ありません。ただしこの特例の適用期間は「令和5年10月1日~令和11年9月30日」の6年間だけです。この期間内にインボイス対応を完了させる必要があります。
 

 

“わかりやすい!インボイス制度eBook”

 

 

すべての人が対象のインボイス制度緩和措置

政府は事業者側の声を受けて、インボイス制度に修正を施しています。それにより下記のような緩和措置も、事業規模に関係なく受けられるようになりました。

 

1万円未満の返品・値引きへの返還インボイスが不要に

インボイス制度の導入後は、取引する商品でリベート・値引き・返品が発生した場合に返還インボイスを発行しなければいけません。返還インボイスでは、通常のインボイスの情報に加えて、事象が発生した日付や返還日などを記載する必要があります。したがって特に小規模な取引を何度も行うケースでは、膨大な手間が生じると懸念されています。

 

こうした懸念を受け制度が修正され、商品が1万円未満の場合、返還インボイスの発行は必要なくなりました。この措置の対象は全事業者で、期間も設けられていません。また、振込手数料の値引き処理も対象となります。

 

 

登録申請は2023年4月以降でも可能に

インボイス制度開始時にインボイス発行事業者になるためには、原則令和5年3月末までに申請が必要です。しかし、何らかの事情でこの期間までに間に合わない事業者もいます。この状況を踏まえ、令和5年9月30日までに申請を行えば、令和5年10月1日を登録開始日として取り扱われるよう変更されました。

 

従来は、上記のような申請期間の延長措置を受けるためには、「令和5年3月末までの申請が困難である事情」を記載しなくてはならない、と公示されていました。これが修正され、事情の記載は不要になりました。その結果、全事業者が令和5年4月以降の申請でも、インボイス制度開始時に間に合うようになりました。


AI入力ソリューション無料パンフレット

 

経過措置の内容は?免税事業者からの仕入れに対する措置

インボイス開始後の経過措置として、インボイスを発行できない免税事業者からの課税仕入れについても、一定割合を仕入税額と見なされます。この措置は下記のように3年ずつに分け、控除比率を変えながら、6年間講じられる予定です。

・令和5年10月1日〜令和8年9月30日:仕入税額相当額から80%の控除

・令和8年10月1日〜令和11年9月30日:仕入税額相当額から50%の控除

 

この期間を過ぎるとインボイス発行がなされない課税仕入れは控除額として利用できなくなるため、注意しましょう。またこの経過措置の利用にあたっては、帳簿・請求書に以下の事項を記載した上で、請求書を保存する必要があります。

 

-帳簿への記載

・仕入れ先の氏名or名称

・仕入れた年月日

・仕入れに係る資産、役務の内容と経過措置の適用をする旨

・仕入れに係る支払対価の金額

 

-請求書への記載

・書類作成者氏名or名称

・課税資産を譲渡した年月日

・課税資産の譲渡に係る資産、役務の内容

・税率ごとに合計した、課税資産譲渡の税込み価額

・書類の交付を受ける事業者の氏名・名称
 

 
 
 
 

インボイス制度対応ガイド

 
 

 

課税事業者になり、簡易課税制度を選んだ場合

以上のような緩和措置や経過措置を知ったことで、課税事業者に移行しようと思いいたる免税事業者も多いでしょう。新たに課税事業者として登録する際には、簡易課税制度の利用も検討してみてください。

 

この制度では、事業区分ごとに設定してあるみなし仕入率を使用して、簡単に仕入税額が計算できます。さらにこの制度で計算することで、通常の計算よりも税額が低くなることがあるため、節税策としても有効です。

 

まず計算に使用される各事業区分とみなし税額は以下となります。

第一種事業:卸売業、90%

第二種事業:小売業、80%

第三種事業:産業・林業・漁業、70%

第四種事業:他事業種に該当しない事業(飲食など)、60%

第五種事業:運輸通信業、金融・保険業、サービス業、50%

第六種事業:不動産業、40%

 

計算方法は「売上にかかる税額」―「売上にかかる税額×みなし仕入率」です。例えば第一種事業者が330万円を売り上げ、そのうち30万円が消費税だった場合には以下の計算ですぐに、納税額が3万円であると求められます。

 

30万円―(30万円×90%)=3万円

 

このように、この制度では「売上にかかる税率×みなし仕入率」を仕入税額として扱えるため、計算を簡略化可能です。当然この税額に対応するインボイスを発行・保存できます。各種の詳しい事業とみなし仕入率に関しては以下のHPを参考にしてください。

 

簡易課税制度の事業区分

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm
 

 


AI入力ソリューション無料パンフレット

 

 

インボイス制度に対応するための準備

インボイス制度に対応するためには、さまざまな準備が必要です。ここでは必須となる準備を2つ解説します。

 

適格請求書発行事業者への登録

インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者への登録を済ませておく必要があります。適格請求書発行事業者の登録申請書を提出すれば登録できます。申請書は下記からダウンロードして記載し、インボイス登録センターへ郵送しましょう。またはe-Taxでも提出可能です。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/pdf/0022003-083.pdf

 

申請書は2枚となっており、1枚目に「申請者情報」「事業者区分」などを記載して、2枚目に「事業者情報」と「登録要件」をチェック項目に記入します。申請後は、適格請求書発行事業者公表サイトにて登録番号や事業者名などが公表されます。

 

また、適格請求書発行事業者に登録するには、課税事業者でなければいけません。したがって現在、免税事業者である場合は、まず課税事業者選択届出書を所轄の税務署に申請する必要があります。この届出書は、以下からダウンロードできます。また税務署でも入手可能です。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/pdf/1461_01.pdf

 

この申請書には、課税事業者の情報といつから課税を適用するのかを記載します。その他、総売上高や課税売上高、法人の場合は事業年度の記入が必要です。これにより課税事業者として登録されたら、先述の適格請求書発行事業者も申請してください。

 

 

制度に合わせたフォーマットへの変更、ツールの見直し

インボイスを発行する場合、消費税額計算なども正確に行った上で正しいインボイスを作成する必要があります。

 

特に今まで免税事業者であった売手は、こうしたインボイス作成に多くの時間や手間を費やすことが予想されます。仕入側でも、発行されたインボイスの保存に関する方法の定義や、免税事業者と取引する場合の対応を考えなくてはいけません。

 

したがって一般にインボイス制度への対応策として、売手側と買手側双方で書類作成のフォーマット見直しやシステムの変更、社内体制の見直しなどが求められます。こうしたインボイス対応を効率化するには、ITツールの導入がおすすめです。

 

インボイス対応を契機としたITツール導入には補助金も利用可能です。これを機に、社内システムを新たなものへ変更しても良いでしょう。

 

例えば多くの企業では、インボイスの作成・確認に上長の承認を要するでしょう。しかしすべての該当書類をそうした承認プロセスで処理していくには、多くの手間・時間がかかります。

 

そこで無限の「二次元ワークフロー・ソリューション」を導入し、ワークフローの効率化を目指しましょう。

 

不必要な確認メールを作成することなど、多くのムダを省略できます。これにより業務プロセスを最適化しやすくなります。ハンコ業務をなくすことも可能なため、テレワーク化の推進策としても効果的です。

 

さらに無限の「AI入力ソリューション」もあわせて活用することで、例えば紙資料を高精度で電子データに変換可能です。

 

書類の分類や受け渡し業務の自動化を実現する環境も整います。こうした機能を活かせば、インボイス対応と関連して生じる電子データの保管業務も、効率化・最適化していけます。

AI入力ソリューション無料パンフレット

 

二次元ワークフロー・ソリューション無料パンフレット

 

 

 

まとめ

インボイス制度へ対応するために、多くの事業者は体制見直しを進めています。課税事業者となるか迷っている免税事業者の方は、本記事で紹介した特例や補助金制度、簡易課税制度にも気を配りつつ、検討を進めてみてください。

 

インボイス対応を契機として、IT導入補助金を申請しながら新たな社内システムを構築するのもおすすめです。ぜひ無限の各ソリューションで、業務プロセスの効率化を目指してみてください。

WEBからのお問い合わせ

株式会社無限やソリューションなどへの資料請求・お問い合わせは、お気軽にご連絡ください。

PAGETOP