2022.01.31AI-OCR
検索要件が大幅緩和?2022年1月電子帳簿保存法の改正内容を徹底解説!
2022年1月から施行される改正電子帳簿保存法では、従来の検索要件が大幅に緩和されています。ほかにも事前の承認廃止などの変更があり、以前よりも電子帳簿保存への移行がスムーズになります。
これを機に、DX推進に向けて電子帳簿保存を導入し、ペーパーレス化を図る企業も増えることでしょう。本記事では、電子帳簿保存法の法改正について解説します。
「電子帳簿保存法」とは、今まで紙で保存していた税務関係の書類を、電子化して保存することを認めた法律です。
法人税や所得税を納める際の根拠となる決算書類や会計帳簿類、取引先との請求書や領収書などの書類は、種類に応じて納税後も5年・7年・10年などの保存義務があります。従来、会計システムなどを利用して入力したデータを印刷したものや、手書きの帳簿や伝票などを一定期間保管しなければなりませんでした。
仕訳日記帳や総勘定元帳、売掛・買掛帳、固定資産台帳などの帳票は、取引件数が多ければかなりのボリュームになり、ファイリングして書庫に保管するスペースを確保する必要があります。
そもそも帳簿類は、申告漏れや偽装などの不正を防ぐ税務調査での確認に使用されます。調査の際には、指定された書類を素早く提示しなければなりません。そのため、大量の書類を整理整頓して保管しなければならず、保管期限を過ぎた書類は適切に廃棄する必要がありました。
しかし、電子帳簿保存法の施行により、会計システムで入力したデータはそのままで、取引先から郵送された請求書などはPDFデータとして読み込み電子化することが可能になりました。これにより、今までの紙の書類と比べて、保管スペースや管理の手間・コストなどを大幅に削減できます。
また、ペーパーレス化が実現すれば、データベースから簡単に検索して該当書類を見つけ出せるようになります。書類を探したり整理したりする手間が省けることは、大きな業務効率化につながるでしょう。
電子帳簿保存法自体は1998年に公布されていますが、当時は完全電子化というには程遠い内容で、従来の紙の書類から脱却するには難しい状況でした。しかし、今日までに技術の進歩や時流に沿った改善策が施され、少しずつ法改正を重ねて現在に至ります。ここで、過去の電子帳簿保存法の主な法改正について振り返ってみましょう。
1998年:電子帳簿保存法制定、電子データの保存が可能
2005年:一定要件を満たす書類のスキャナ保存が可能(請求書や領収書の取引金額は3万円未満のもの限定、要電子署名付与)
2015年:取引金額の上限3万円を撤廃、電子署名不要
2016年:スキャナ以外のデジタルカメラやスマホの撮影データも容認
2020年:キャッシュレス決済時の領収書が不要
2021年:タイムスタンプ・検索要件の緩和(2022年1月1日から施行)
2022年1月の法改正で何が変わるのか
今回の法改正では、DX推進によるペーパーレス社会の流れをくみ、電子帳簿保存を導入しやすくするための抜本的な見直しがされました。以下、電子帳簿の保存対象となる電子帳簿・スキャナ保存・電子取引の3種類について、従来からの主な改正点をご紹介します。
今まで電子帳簿保存を行うには、事前に管轄の税務署に届け出をして、承認を受ける必要がありました。電子帳簿保存の申請には、電子化されたデータの改ざんを防ぐための方法や、データの検索性などについて、真実性と可視性の確保を重視した所定の要件に適合することが条件でした。
それらの細かく規定された要件が、電子帳簿保存の推進を阻む要因ともなりかねないとされ、今回の法改正では要件が緩和されています。具体的には、税務署長への事前の届け出と承認を不要としました。
これにより、担当者の事務処理の負担が軽減され、電子帳簿保存の導入と移行がスムーズに進められます。
今後は、データを出力して帳票として印刷せず、データとして保存するだけで済むようになります。ただし、「税務調査が入る場合に備えて、会計システムの説明書を閲覧できるようにしておくこと」「税務職員へのデータ開示要請を拒否しないこと」「複式簿記のルールに沿って記録すること」などの要件があります。
なお、法改正以前の届け出に必要な電子帳簿保存の要件を満たす事業者は優良な電子帳簿と認められ、事前に届け出をして承認を受けることで、仮に申告漏れなどがあった場合でも過少申告加算税が5%軽減される優遇措置が受けられます。
また、青色申告特別控除65万円が適用されるため、節税対策で有利です。優良な電子帳簿の要件を満たさなくても電子帳簿保存は可能ですが、前述の税制面でのメリットが享受できません。
スキャナ保存に関しても、管轄の税務署への届け出が廃止されるなど、以前と比べて要件が緩和されています。今までは、受け取った領収書などをスキャンしたデータは、自署をして3営業日以内にタイムスタンプを付与してもらう必要がありました。
「タイムスタンプ」とは、タイムスタンプ局と呼ばれる正式な認定事業者が発行するマークです。
タイムスタンプを取得した電子文書は、スタンプが付与された日時以後、データなどの変更が行われていないことの証明になります。
これまでスキャンして電子化されたデータは、3営業日以内のタイムスタンプが付与されていなければ、正式な証憑とは認められませんでした。つまり、電子データの信頼性を保証するために、タイムスタンプの速やかな取得が義務付けられていたわけです。
2022年1月からは自署が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長70日以内に延長されました。
また、電子データへの訂正や削除などの変更をあとから確認できるシステムなどを利用した場合は、期限内にスキャンして保存すればタイムスタンプの付与が不要となっています。3日以内の制限がなくなったため、今後は電子化をある程度まとめて効率的に行えるようになります。
一方、電子データの検索要件についても、あとから該当のデータをすぐに探せるよう、検索項目を指定されたうえ、日付や金額を範囲指定して検索可能にすること、2つ以上の条件指定により検索可能にすることなどの要件がありました。
しかし改正後は、検索要件のうち、記録項目は取引年月日・取引金額・取引先の指定のみに変更されました。ただし、この場合は、税務調査の際のダウンロード要請に応じられることが条件です。
ペーパーレス化が進み、郵送コストのかかる請求書などの送付を廃止し、電子メールによる文書の送付や指定URLからのダウンロードを可能とする企業が増えています。
改正前までは、所得税や法人税に関する電子取引情報の保存は、出力して紙の文書での保存が認められていました。しかし、今回の改正により電子取引に関しては、今までの紙文書での保存が無効になります。
つまり、取引先などからインターネットを通じて受領した請求書・領収書・契約書などは、紙に出力したものを保存するのではなく、電子データのまま保存することとなりました。これにより、2022年1月以降にデータで受け取ってから印刷した書類は、正式な証憑とは認められなくなるのです。
保存の際は、タイムスタンプが付与されていればそのまま保存し、タイムスタンプがなければタイムスタンプ局に付与依頼をして保存することになります。
もしくは、JIIMA(公益法人日本文書情報マネジメント協会)により電子取引に対応したシステムやソフトと認められたツールを利用すれば、タイムスタンプは不要です。JIIMA認定のシステムやソフトを使用しなくても電子保存は可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
・検索性を確保する意味で、ファイル名に取引年月日、取引先名、取引金額などを含める
・取引先別や月別のフォルダに分けて保存する
・保存ファイルのリストを作り一覧性を持たせ、どこに何が保存されているか確認できる
また、保存したファイルに対して、勝手に訂正や削除などの改ざんが行われないよう、事務処理規定を策定して遵守する必要があります。この電子取引データの保存は、法人税と所得税の申告を行うすべての事業者に適用されます。
これらの要件を満たさなければ、青色申告の承認が取り消されることもあるため、早めに対策しなければなりません。
電子帳簿保存法の改正により、「かえって経理の入力業務が増えるのでは?」「書類の読み取りにも人手が必要」「そもそも手書きの書類を読み取って検索性を持たせるにはどうしたらいいのか」と悩んでいる企業担当者の方もいるでしょう。
株式会社無限が提供する「AI入力ソリューション」と「二次元ワークフロー・ソリューション」との組み合わせなら、それらの課題を解決し、人的コストや時間コストの大幅な削減が可能です。
取引先ごとに異なる書式の取引データの入力業務などは、手入力では作業効率も悪く、入力ミスも起きがちです。
しかしAI入力ソリューションなら、事前に設定した入力ルールに沿ってAIが自動でデータ化してくれます。ヒューマンエラーをなくしつつ人材不足解消に役立ち、業務の改善や効率化にも大きく寄与してくれるでしょう。
シンプルな操作感のため、導入後はあまり迷うことなく入力以外の業務に専念できます。AIは、業務をこなすほどに学習機能を発揮し、精度が高まります。
一方、二次元ワークフロー・ソリューションは、ワークフローがハブとなって業務プロセスと承認プロセスをつなぐ画期的なツールです。それぞれの部門ごとに独立していたフローでも、全体を通した1本のフローにして、進捗を可視化できます。
紙ベースの文書を廃止して電子化すれば、リモートワークや脱ハンコを促進でき、近年のニューノーマル時代の働き方にも柔軟に対応できるでしょう。
過去にも電子帳簿保存法が随時見直され、その都度法改正がなされてきましたが、今回は今までの概念が大きく変わるような改正といえます。今まで電子帳簿保存やペーパーレスに消極的だった企業も、検索要件の緩和や事前の届け出が不要になったことで、一気に電子帳簿への移行が加速する見込みです。
もし今後、取引先が電子取引を希望するようなら、対応せざるを得ないケースもあるでしょう。メリットの大きい改正ですので、これを機に信頼の置けるシステムの導入を検討してはいかがでしょうか。経理部門だけでなく経費精算や販売管理など、多部門での業務効率化とコスト削減が可能です。
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