コラム

2020.07.01入力業務

労働時間を短縮するために必要なITツールとは?

働き方改革の一環として「長時間労働の是正」に取り組む企業が増えています。主な理由は、労働基準監督官による臨検が本格的になったこと、新しい人材確保のための現社員の労働時間を削減しようという考えです。

 

ただし、この労働時間短縮は簡単には成功しません。その原因の多くは「企業と社員の意識のズレ」が生じるためです。

それは、労働時間を短縮したからといって業務量が減るわけでは無いため、逆に無理な時間設定をすることで、一部の社員に負担が集中し、結局は残業をしなければ業務が回らなくなるといった事態が起きています。

こうした「経営サイドと現場の意識のズレ」を生じさせず、社員の負担も増やさずに労働時間を短縮するためにはどうすればよいのでしょうか?
 

 

 

 


 

そもそも、労働時間短縮が必要な理由とは?

日本は先進国の中でも非常に生産性が低い国です。OECD(経済協力開発機構)が行った調査によれば、日本人の平均年間労働時間は1,719時間。それに対してドイツの平均年間ロ労働時間は1,371時間、フランスは1,482時間、デンマークは1,475時間です。ドイツと比較すると日本人は43.5日間も多く働いていることになります。

 

一方、世界経済トップの米国はというと、平均労働時間は1,790時間で日本とほぼ同じ労働時間です。しかし、「なんだ、日本人はただの働き者じゃないか」と安心してはいけません。

日本人一人あたりのGDP(1時間あたりの国内総生産)で見れば、米国よりも23.4ドル低い39.5ドルだからです。さらに、ドイツのGDP59.5ドル、フランスは60.8ドル、デンマークは63.4ドルと軒並み日本よりも高い数値を持っています。

日本は世界的に見てもかなり生産性が低い国ということがわかります。

引用:OECD(経済協力開発機構)Average annual hours actually worked per worke

 

労働時間短縮が必要な理由の一つがこの生産性の低さです。日本企業の多くは、生産性を向上するための労働時間を短縮し、相対的に生産性を高めようとしています。

 

では、なぜ日本人は労働時間が長い?

日本人の労働時間が長く、かつ生産性が低い理由はいくつかあります。

未だに根付く労働時間至上主義

日本がバブル経済に沸いた1980年代後半から1990年代前半、多くの企業が「社員数と労働時間を増やせば業績が上がる」と信じていました。その頃に「企業戦士」や「猛烈社員」という言葉が生まれるほど、社員はすべてを犠牲にしてその時間を会社に捧げるもの、という意識が強くありました。

 

その後バブル経済が崩れ、会社への忠誠心は昔ほどではなくなったものの、管理職の多くはバブル経済期に「企業戦士」や「猛烈社員」と呼ばれてきた人々です。従って社員を評価するにあたって労働時間を加味することが多くなっています。

 

社員もそれを理解しているからこそ、あえて残業しなくてはならない状況を作り、見せかけの忠誠心を示すことで自分の評価を高めようとします。こうした「労働時間至上主義」は未だに日本経済に根付いており、生産性を低価させる大きな原因です。

サイロ化されたIT環境

日本では古くからOA業務のIT化が進んできました。OA業務とは主にパソコンを使った事務作業であり、部署ごとに様々なOA業務があります。このOA業務を効率良く行うために導入されたのが、部門特化型のITシステムです。財務会計システムや人事管理システム、営業支援システムなど部門ごとに特化されたITシステムは、一見多大な恩恵をもたらしたかのように思えます。

 

実際にそれらのITシステムによって効率化された作業は多いでしょう。しかしそれ以上に、「ITシステムのサイロ化」という問題は巨大でした。サイロ化とは、企業のある部門が他の部門と情報共有や連携などをせずに、独自に業務を遂行し孤立した状態を表す言葉です。

参考:IT用語辞典(https://www.weblio.jp/content/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AD%E5%8C%96)

 

部門ごとに特化したITシステムは組織のサイロ化を急速に進め、円滑なコミュニケーションがままならず、後戻りもできない状態を生みました。ビジネスとは一つの部門で成り立っているものではありません。

 

各部門の業務プロセスが寄り集まって、一つのビジネスが完成します。そのため部門間で円滑な連携が取れないことは非常に効率が悪いビジネスを生んでしまい、その結果生産性の低下を招きます。

 

このように、日本人の労働時間が長くかつ生産性が低い理由は、日本企業の風習とIT環境にあります。

 

失敗しない労働時間短縮のために

労働時間短縮に失敗しないためにまず行うべきことは、「時間短縮」に力点を置くのではなく「生産性向上」を中心とした思考にシフトすることです。100の労働時間で100の生産性を得ている場合、労働時間を50まで下げると生産性も50まで低下します。

これでは単に労働時間を短縮しただけで、企業としても社員としても何の成長にもつながりません。従って、まずは100の労働時間で150の生産性を得られるように取り組み、その上で労働時間を短縮します。そうすれば、労働時間を50まで下げても生産性は100のままなので、労働時間短縮と生産性の向上を同時に達成したことになります。

 

かなり簡単に説明しましたが、これが労働時間短縮に失敗しないための勘所です。こうすれば、企業は労働時間を短縮しつつ従来の生産性を維持し成長につながります。ここで大切なことが、労働時間短縮についていかに社員の理解を得るかです。

 

◆生産性を向上するためには

肝心の生産性を向上するためには、効率化ツールの導入がおすすめです。現在では、多くの業務が個別に設計されたシステムを使用することで必要な業務処理を行っています。

 

そのため、知らず知らずのうちに、システムを横断する形で業務を担当している社員がシステムでフォローできない業務を手作業で担っている部分が多く存在します。

 

特に、業務を横断する処理フローにおいては、帳票を出力して確認しながら次の処理のためにシステムにデータを再入力しているケースや、そもそも最初の登録の段階で手書きによる帳票が大量に存在し、データ入力に多くの業務時間を割かなくてはいかなくなっていることが多く見受けられます。

 

全ての環境にデジタルデバイスを配置することは難しく、店舗などお客様と直接対面する場面では、いまだに手書きによる申込書などの帳票が多く存在しています。

 

そこで現在注目されているのが、RPA(Robotic Process Automatio:ロボティック・プロセス・オートメーション)A IArtificial Intelligence)などを用いた、データ入力や判別の自動化技術です。

 

ドキュメント作成だけでなく、ITシステムやクラウドアプリケーションをまたいだデータ登録の自動化などにも利用可能で、部門ごとや部門をまたぐ業務処理の効率化に大変貢献しています。

 

まとめ

いかがでしょうか。労働時間の短縮には業務の効率化は欠かせません。そのためにもまずは、社内にどの程度帳票類が存在しているかを把握し、そのデータ登録に要する時間や工数を短縮することで、どの程度業務が効率化できるか、検討してみてはいかがでしょうか。

 

 


 

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